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雪の日の写真展

エントランスに巨大な写真。ふたつの「手」の写真です。生まれたばかりの赤ちゃんの手と、その手を包むお母さんの手。 
春の雪が舞うなかを一歩会場に入ると、饒舌さを秘めたモノクロームの世界が広がっていました。 
伊丹市立工芸センター企画展示室で行われている 写真展「肖像」 は、中竹孝行さんが10年の歳月をかけて撮った「手」の作品展です。北海道の酪農家の手や原宿に集う若者たちの手、大工さんの手、染色家の手、ギタリストの手。様々な職業の、様々な年齢の、様々なところに住む人たちの手。これらは「手に付いたゴミまでも撮りたい」(中竹さん)から、と、すべて巨大カメラ8×10で撮影されています。 
「肖像」というタイトルは、会場を進みゆくとヒシヒシ実感をともなって意味を成してきて、むしろ貌(カオ)より、実は手の方が有無をいわさず「ヒトとなり」を現してしまう人間のパーツのではないか、と気付かされました。
 
中竹さんは環境問題に関わる人々の表情を一コマ写真で切り取って彼らのメッセージとともに発表した 「地球からありがとう」 で知られる写真家ですが、ここ数年来すすめているライフワークが、もう一つあるのだとか。それは、「家族写真」で、30組の家族を毎年一回撮り続けているらしい。その被写体家族は奄美大島から北海道に点在し、はたまた、イタリアにまで撮りにでかけるのだといいます。中竹孝行撮影の「家族写真」のプリントは、そのほとんどが、ワインやオリーブオイルなどに化けてしまうのだそうです。なぜなら、その中竹作品は、被写体家族が住む土地の特産品と物々交換されるから。ーーそんなほのぼのとした撮影風景が目に浮かぶようなお話を会場で聞かせていただいていたら、ひゅーっと風のように喜多章氏(2004,12,28のagenda-クチュールライト参照)が登場 ! お二人は男の友情を絵に描いたような間柄で、私は喜多さんに中竹さんを紹介してもらったのです。喜多さんの颯爽ぶりもしっかり「フォト日記」してきたのて、後日、公開いたしますね。
 
写真展「肖像」は伊丹市立工芸センターの後、 スタジオコンチェルト に巡回される予定です。

写真中/左が中竹孝行さん