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草森紳一さんと本とビートルズ

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先週、九段会館で、3月に急逝された「草森紳一さんを偲ぶ会」がありました。
もう、永い間、お会いすることもなかった草森さんなのですが、ひょんなことから、ご案内をいただき、これも何かの巡り合わせかもしれないと思い参加させていだたきました。

話の特集の矢崎泰久さんの献盃にはじまり、清水哲男氏、立木義浩氏、村松友視氏、車谷長吉氏ら親交の会った方々のお話がどれも草森さんらしく(当たり前なのですが)、ときに笑いに包まれた和やかな会場でした。

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会場には、大倉舜二さんが撮られた白い花に囲まれた草森さん、と50冊に及ぶ著書が並ぶなかに、自筆の原稿がありました。毛筆です。腱鞘炎で(物書きの職業病?)ペンは持てないからだろうと思っていたら、草森さんは紙を片手で立てて持ち、筆で書いてらしたのだそうです。蔵書に書くための場所さえ奪われて・・
恐ろしいほどの知識人であった草森さんの蔵書は5万冊とも6万冊ともいわれていて、それらの本に囲まれて(埋もれてといった方が正しいか・・)座して書く。書くスペースの他はすべて本だった、ということです。

高橋睦郎氏が会場で朗読された「読む人 または書刑 草森紳一に」を少し引かせていただきます。

文字が発明され 意味が発見されて
人間の罪悪と世界の不幸が 始まった
知らなかったときの無辜(むこ)と浄福を思うには
ひたすら読む 読み続けるしかない
読んだ書物は端から積んで 天井に届き
さらにあらたに積みつづけて 壁面を侵す
食うための場所 寝るための空間など
書物に占領され 疾(と)うに消え失(う)せた
幾十幾百とない書物の塔の 僅かな隙間に
尻を置き 脚を抱いて 膝の上で読みつづける
読んで夜もない 読みつづけて昼もない
読んで昨日もなく 読みやめず明日もない
読みながら消耗し 衰弱して いつか倒れ
そのまま死ぬだろうことは わかりきっている
文字を案出し 書物を創出した人間を自覚し
自らに課する刑罰 書刑そのまま屈葬
(略)



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草森さんにはじめてお目にかかったとき、私が聞いたこと。
ビートルズ、どうでした???
草森さんはビートルズが来日したとき、写真集の取材でヒルトンの同じフロアにコピーライターとして(どういういきさつだったのかは聞きそびれたのですが)、写真家の浅井慎平さんと滞在してらしたのです。
「え、忘れちゃったよ」と真顔で問いただす私に困惑なさっていたのでした。

未発表のあるいは雑誌に掲載されたまま上梓されていない原稿がたくさんあるそうです。
さよなら、でも本のなかでもいい、もういちど、おあいしてみたい。

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