発狂したピラミッド──pyramide insensée
空っぽのシャンデリア──chandelier creux
すんばらしい金物──quincaillerie superbe
ボルト締め鉄板のおぞましい記念柱──odieuse colonne de tôle boulonnée
これらの奇妙な言葉の羅列は、エッフェル塔を建設中の1888年当時、まだ、その美しい4本の脚が出来上がりつつある彼女が賜った酷評です。
この頃の知識人たちがこぞってエッフェル塔建設に反対し、陳情書をパリ市に提出したことはよく知られた話で、モーパッサン、デュマ・フィス、ユイスマンス、作曲家グノーやオペラ座を設計したガルニエら、50人が名を連ねています。
この陳情書は所轄大臣ロクロワ商工相に渡され、彼は、〈有益なご意見を頂戴し云々〉とたいそう丁寧な回答を寄せたのですが、末尾には
〈 "une si noble et si belle prose━かくも格調高き、かくも美しい散文" は是非とも万博会場に展示致したい所存にて候〉と結んであったということです。
エッフェル塔が"美しい散文"だなんて、大袈裟で時代がかった言いまわしだけれど、彼女にふさわしい。
・・・って、贔屓目過ぎですかねー
ともかく、本日、エッフェル塔のお誕生日でした。
**このエピソードは私が尊敬してやまない倉田保雄先生のご著書「エッフェル塔ものがたり」を参考にさせていただきました。