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写真 アーカイブ

2005年03月13日

雪の日の写真展

エントランスに巨大な写真。ふたつの「手」の写真です。生まれたばかりの赤ちゃんの手と、その手を包むお母さんの手。 
春の雪が舞うなかを一歩会場に入ると、饒舌さを秘めたモノクロームの世界が広がっていました。 
伊丹市立工芸センター企画展示室で行われている 写真展「肖像」 は、中竹孝行さんが10年の歳月をかけて撮った「手」の作品展です。北海道の酪農家の手や原宿に集う若者たちの手、大工さんの手、染色家の手、ギタリストの手。様々な職業の、様々な年齢の、様々なところに住む人たちの手。これらは「手に付いたゴミまでも撮りたい」(中竹さん)から、と、すべて巨大カメラ8×10で撮影されています。 
「肖像」というタイトルは、会場を進みゆくとヒシヒシ実感をともなって意味を成してきて、むしろ貌(カオ)より、実は手の方が有無をいわさず「ヒトとなり」を現してしまう人間のパーツのではないか、と気付かされました。
 
中竹さんは環境問題に関わる人々の表情を一コマ写真で切り取って彼らのメッセージとともに発表した 「地球からありがとう」 で知られる写真家ですが、ここ数年来すすめているライフワークが、もう一つあるのだとか。それは、「家族写真」で、30組の家族を毎年一回撮り続けているらしい。その被写体家族は奄美大島から北海道に点在し、はたまた、イタリアにまで撮りにでかけるのだといいます。中竹孝行撮影の「家族写真」のプリントは、そのほとんどが、ワインやオリーブオイルなどに化けてしまうのだそうです。なぜなら、その中竹作品は、被写体家族が住む土地の特産品と物々交換されるから。ーーそんなほのぼのとした撮影風景が目に浮かぶようなお話を会場で聞かせていただいていたら、ひゅーっと風のように喜多章氏(2004,12,28のagenda-クチュールライト参照)が登場 ! お二人は男の友情を絵に描いたような間柄で、私は喜多さんに中竹さんを紹介してもらったのです。喜多さんの颯爽ぶりもしっかり「フォト日記」してきたのて、後日、公開いたしますね。
 
写真展「肖像」は伊丹市立工芸センターの後、 スタジオコンチェルト に巡回される予定です。

写真中/左が中竹孝行さん

2007年03月21日

Paris Vertical

>paris vertical horst hamann

エッフェル塔はあらゆるところにあって私を悩ませます。
パン屋の袋やお菓子の箱、ノートやバッグやTシャツにも。
時には、ウィンドーに大きなチョコレートのエッフェル塔が…
何処にでもあって、こんなに蒐集しやすいものはない、とも言えるのですが、だからこそ、厳しい線引きを自分に課しています。でないと大変なことになってしまいます‥

街でハンティングしたエッフェル塔。


『塔はまた,全世界の人々の前にある。まず、パリを一つの映像で表現しなければならないおりには,世界中至るところに、パリの象徴としてこの塔はあらわれでる。』
「エッフェル塔」より抜粋 ロラン・バルト(宗 左近 諸田和治 訳)


2007年03月27日

こんなに美しい本

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最近入手した本の中で、気に入っているのが、これ。
昨年開催されたギィ・ブルダンの写真展のカタログです。
箱に20枚ほどの印刷された写真が入っているだけなので、厳密には「本」とはいえないかもしれませんが。
箱はさらに、網タイツ風のカバーに包まれています。

guy bourdin.JPG

シャルル・ジョルダンの靴のセンセーショナルな広告写真で知られたギィ・ブルダンにぴったりイメージが重なります。
彼の写真は扇情的なのだけれど、どこか、ストイック。それが危ういバランスを保っている。

聞くところによると、彼は存命中、写真集の制作や作品のギャラリー展示を許さなかったらしい。
それは、「写真はそれを最初に掲載したメディアのみに属するべきだ」という強い信念があったからだ、というのです。
う〜ん、かなり、ストイックでストレート。
そんなところが写真に現れて現われていたのだな、と妙に納得してしまいました。

guy bourdin-cc.JPG

彼が亡くなって、それで、こんなに美しい写真集を見ることができるというのも皮肉なことではあるのですが。
Guy Bourdin 1928 ー1991

2008年04月08日

下駄でコイコイ

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細江英公の写真に"海辺のコイコイ"という作品があって、いい写真だなぁと思っていたのですが、被写体の女性の装いから判断して、緻密にセッティングして撮影されたものだと想像していました。

写真は、海辺に浴衣のようなものを着た男と、白い肘を被うほど長い手袋をしてキャプリーヌを目深に冠りハイヒールを履いた女性が砂の上に座っているツーショットです。男は着物の袖をまくり、女は白い手袋に覆われた手で花札を持ち、砂の上の座布団に今にも一手指そうかというタイミングで、細江英公のカメラは海をバックに二人を真横から捉えています。

男は澁澤龍彦。
女は矢川澄子。
1965年頃。

二人の間には砂の上の座布団。
コイコイというのは花札のゲームなのですが、この座布団が勝負の場、という訳です。

モノクロームのこの写真について細江英公氏がTVで話されたことがあって、私はたいそう興味深く聞きました。というのも、この写真は計算され尽くしたセッティングなどではなく、澁澤龍彦と矢川澄子が夜を徹してコイコイをしていて、明け方になって鎌倉の海辺で続きをしよう、と座布団を引きずって移動した時に撮影されたものだと細江英公氏が語られたのです。

「もう二度とこんな写真は撮れないでしょう。」と細江英公氏。



コイコイという遊びは たいそう面白くて、かつてしらじらと夜が明けるまでゲームに興じた経験のある私は、この時間の感じがとてもよく分るのです。
もう今はこの遊戯のルールさえ思い出せないのですが・・

この遊戯を教えてくれたのは草森紳一さんでした。
先日、草森さんは永代橋の家で本に埋もれたまま、下駄とサプライズを残して亡くなってしまいました。

草森さんが「本が崩れる」を出されてしばらく後に、神保町のバーで偶然、この新書の編集者の女性と隣り合わせ、草森さんの近況を伺って、いつか、また、お会いしたいものだと思いつつ、もうそれは果すことのできない望みになってしまいました。


訃報を知って、"海辺のコイコイ"を眺めてみたくなりました。
図録(澁澤龍彦幻想美術館)によるとこの写真のタイトルは"由比ケ浜で矢川澄子とコイコイをする澁澤龍彦"となっていました。私がこの写真をはじめて知った時は"海辺のコイコイ"か"コイコイ"だった気がします。

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2008年04月27日

うつひてみた

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と、りりの口調を真似て自嘲するしかないVQ1005写真です。

超ピンぼけ。
いつもだと、カメラを向けないものを撮ってしまっています !

手術用のはさみの刃、メモ用紙、水道の栓。



VQ-eiffel%2A.jpg



そして、これはもっとピンぼけ。
地図帖、BURT'S BEEの紙白粉、(上の写真にも刃が写っている)ペーパーナイフ。

いちばん上に乗っかってるのは古いキーホルダー。
せっかく、エッフェル塔なのに、これではまったくわかりませんねー

でもね、カメラがかわると被写体も必然的にかわるのだ、と面白い発見をしました。
トイカメラの魔法 !?

ほんとうは動画モードで撮ったのだけど、、、
なぜかスチールになっていまひた。

2012年07月20日

Long Goodbye

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脚のご帰還。
想像するだけで背筋がゾッとしそうなシーンだけど、どこかユーモラスで好きな写真です。
それに、靴フェチにはたまらないこの感覚。
エルムート・ニュートン、1987の作品です。

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靴フェチ気味であった私は「お気に入り」だった靴をなかなか捨てられず、ずいぶん前の底が劣化したこの靴も捨てようか、と悩んだ末に「そうだ !! ゴムの溶け出した部分にベビーパウダーを塗ればどうかしら」と妙なことを思いつきました。
そして、10数年振りにこの靴を履いて出かけよう、として機嫌よく歩くこと数歩・・
なんか、崩れ行くような・・

prada.JPG

・・と、このようなことになっていました。
でも愛着のある靴。
捨てる前に記念撮影。

ベビーパウダーはこの場合、役に立ちませんでしたが、私は靴入れに常備しています。
このところ、ご愛用のEASYTONEにも出掛けに一振り。
さらさらと気持ちいい履き心地に。

スニーカーばかりでなく、もちろん、ヒールなどにもベビーパウダーはお役立ちです。
昔、ある高級靴店の取材で、教えてもらったのですが、店内の靴には内側にベビーパウダーを、そっとわからない程度にはたいてあるのだそうです。
むむむ、なるほど、と感心したのでした。
でも、今、そんなことしている靴屋さんはないかもしれませんが。

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で、“LEGS COMING HOME, Montecarlo,1987” はこの本にありました。
1989年にマドリッドで開催されたHelmut Newton新作展のカタログです。
ここで見つけました。

最近はエルムートではなく、ヘルムート・ニュートンという方が一般的かもしれません。
大好きな写真家だったので、事故死のニュースにとてもショックを受けました。
それももう、8年も前のことなのですね。
奥さまのAlice Springsも好きな写真家です。

ところで、今日は金曜日ですね。
こころは官邸前に。