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本 アーカイブ

2007年06月04日

ファーブルの庭

Fabre-livre.JPG

たった1枚の写真に魅せられて買った本です。
この写真↓を見たとたん、手放せなくなりました。

Fabre-1.JPG 『ファーブルの庭』NHK出版より

どうです、この風体。ずば抜けて奇妙。
奇妙もここまでくると、人の心を摑んで離しません。
もう、私の心を鷲掴みです。
そして、この眼差し。
好奇心いっぱいの眼。
1910年頃のファーブルさんです。

取り立てて「虫」に興味がある訳でもないし、ましてやジャン=アンリ・ファーブルに特別の関心を持っても来なかったのに、不思議です。


しかし、今までも、一枚の写真に魅了されて、ずいぶん、雑誌や本を買ってきました。
それも何故か、写真的な写真ではなく、スナップのような写真に惹かれて。

写真は長年とても興味のある分野だし、好きな写真家も数多くいる。
なのになのに、ゼッタイ欲しい、と私を書物購入モードにさせるのはフツー(っぽい)のたった一枚の写真なのです。


で、この本ですが、さらにページをめくると、
こんな写真が・・・

Fabre-hand.JPG 『ファーブルの庭』NHK出版より

「ファーブルの手」です。
この手で 昆虫や植物、鉱物の観察をし、また、昆虫記を著したのですね。
繊細で優しそうな手・・・

子供の頃なかなかアルファベットを覚えられなかったファーブルがそれをマスターできたのは、動物の頭文字でABCを教えてくれる絵本だった、といいます。その絵本で、瞬く間に字が読めるようになった少年はご褒美にラ・フォンテーヌの「寓話集」を貰います。動物の話は少年の興味を引きつけ、彼の知的好奇心は急速に広がっていきました。
ファーブルの少年期に このような偶然ー2冊の本との出会いーがなかったら「昆虫記」は生まれなかったかもしれませんね。

Fabre-labo.JPG 『ファーブルの庭』NHK出版より

そして、これはラボのファーブル。
南フランスの彼の仕事部屋は現在 博物館になっているそうです。
いつか訪ねたい、と思わせる写真です。


「ほんの数分でいいから犬の野生の脳で考え、はえの複眼で世界を眺めてみることはできないものか‥」(ファーブル昆虫記第4巻17章/「ファーブルの庭」NHK出版 渡辺広佐訳より)


フランス革命の100年後に建設されたエッフェル塔をファーブルが見たのかどうかわかりませんが、ファーブル65歳の時でした。

Jean-Henri Fabre1823ー1915

*[Ich aber erforsche das Leben ] Martin Auer
**完訳 ファーブル昆虫記

2008年04月08日

下駄でコイコイ

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細江英公の写真に"海辺のコイコイ"という作品があって、いい写真だなぁと思っていたのですが、被写体の女性の装いから判断して、緻密にセッティングして撮影されたものだと想像していました。

写真は、海辺に浴衣のようなものを着た男と、白い肘を被うほど長い手袋をしてキャプリーヌを目深に冠りハイヒールを履いた女性が砂の上に座っているツーショットです。男は着物の袖をまくり、女は白い手袋に覆われた手で花札を持ち、砂の上の座布団に今にも一手指そうかというタイミングで、細江英公のカメラは海をバックに二人を真横から捉えています。

男は澁澤龍彦。
女は矢川澄子。
1965年頃。

二人の間には砂の上の座布団。
コイコイというのは花札のゲームなのですが、この座布団が勝負の場、という訳です。

モノクロームのこの写真について細江英公氏がTVで話されたことがあって、私はたいそう興味深く聞きました。というのも、この写真は計算され尽くしたセッティングなどではなく、澁澤龍彦と矢川澄子が夜を徹してコイコイをしていて、明け方になって鎌倉の海辺で続きをしよう、と座布団を引きずって移動した時に撮影されたものだと細江英公氏が語られたのです。

「もう二度とこんな写真は撮れないでしょう。」と細江英公氏。



コイコイという遊びは たいそう面白くて、かつてしらじらと夜が明けるまでゲームに興じた経験のある私は、この時間の感じがとてもよく分るのです。
もう今はこの遊戯のルールさえ思い出せないのですが・・

この遊戯を教えてくれたのは草森紳一さんでした。
先日、草森さんは永代橋の家で本に埋もれたまま、下駄とサプライズを残して亡くなってしまいました。

草森さんが「本が崩れる」を出されてしばらく後に、神保町のバーで偶然、この新書の編集者の女性と隣り合わせ、草森さんの近況を伺って、いつか、また、お会いしたいものだと思いつつ、もうそれは果すことのできない望みになってしまいました。


訃報を知って、"海辺のコイコイ"を眺めてみたくなりました。
図録(澁澤龍彦幻想美術館)によるとこの写真のタイトルは"由比ケ浜で矢川澄子とコイコイをする澁澤龍彦"となっていました。私がこの写真をはじめて知った時は"海辺のコイコイ"か"コイコイ"だった気がします。

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2008年07月04日

草森紳一さんと本とビートルズ

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先週、九段会館で、3月に急逝された「草森紳一さんを偲ぶ会」がありました。
もう、永い間、お会いすることもなかった草森さんなのですが、ひょんなことから、ご案内をいただき、これも何かの巡り合わせかもしれないと思い参加させていだたきました。

話の特集の矢崎泰久さんの献盃にはじまり、清水哲男氏、立木義浩氏、村松友視氏、車谷長吉氏ら親交の会った方々のお話がどれも草森さんらしく(当たり前なのですが)、ときに笑いに包まれた和やかな会場でした。

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会場には、大倉舜二さんが撮られた白い花に囲まれた草森さん、と50冊に及ぶ著書が並ぶなかに、自筆の原稿がありました。毛筆です。腱鞘炎で(物書きの職業病?)ペンは持てないからだろうと思っていたら、草森さんは紙を片手で立てて持ち、筆で書いてらしたのだそうです。蔵書に書くための場所さえ奪われて・・
恐ろしいほどの知識人であった草森さんの蔵書は5万冊とも6万冊ともいわれていて、それらの本に囲まれて(埋もれてといった方が正しいか・・)座して書く。書くスペースの他はすべて本だった、ということです。

高橋睦郎氏が会場で朗読された「読む人 または書刑 草森紳一に」を少し引かせていただきます。

文字が発明され 意味が発見されて
人間の罪悪と世界の不幸が 始まった
知らなかったときの無辜(むこ)と浄福を思うには
ひたすら読む 読み続けるしかない
読んだ書物は端から積んで 天井に届き
さらにあらたに積みつづけて 壁面を侵す
食うための場所 寝るための空間など
書物に占領され 疾(と)うに消え失(う)せた
幾十幾百とない書物の塔の 僅かな隙間に
尻を置き 脚を抱いて 膝の上で読みつづける
読んで夜もない 読みつづけて昼もない
読んで昨日もなく 読みやめず明日もない
読みながら消耗し 衰弱して いつか倒れ
そのまま死ぬだろうことは わかりきっている
文字を案出し 書物を創出した人間を自覚し
自らに課する刑罰 書刑そのまま屈葬
(略)



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草森さんにはじめてお目にかかったとき、私が聞いたこと。
ビートルズ、どうでした???
草森さんはビートルズが来日したとき、写真集の取材でヒルトンの同じフロアにコピーライターとして(どういういきさつだったのかは聞きそびれたのですが)、写真家の浅井慎平さんと滞在してらしたのです。
「え、忘れちゃったよ」と真顔で問いただす私に困惑なさっていたのでした。

未発表のあるいは雑誌に掲載されたまま上梓されていない原稿がたくさんあるそうです。
さよなら、でも本のなかでもいい、もういちど、おあいしてみたい。

2009年04月26日

本を整理中。

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日々増殖する愛書狂の本、本、本。
書庫のみならず、いろんなところにあふれること久しからずや。

という訳で、整理をはじめました。

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前途多難・・・


こちらでは延べ300名もの有志の方々の協力により、本の整理が本日ついに完結したようです。
計3万1618冊。
段ボール箱にして731個。
こちらの蔵書はやっぱり凄いや !!


**白玉楼中の人:草森紳一記念館
***崩れた本の中から 草森紳一蔵書整理プロジェクト

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2010年10月31日

急遽 !!!

お知らせです。
12月に発売される『ば化粧師』レイコ・クルックさんの記念講演を急遽コーディネイトさせていただきました。
*追記 満員御礼申し上げます
*追記2 講演の記事はこちら


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『ば化粧師』出版記念講演 レイコ・クルックが語る 映画の中の ー変身 / 変心ー

11月9日(火)午後8時30分から
神戸トンカ書店にて
078-333-4720
無料 要予約

パリを拠点に映画・演劇・オペラの世界で、変身術 ーメタモルフォーズー を駆使し、欧米を駆け、巨匠や俳優、アーティストたちの絶大な支持を得るレイコ・クルックさんが熱くクールに語ります。
今回、関西では唯一となるこの出版記念講演会は定員わずか15名 !!
濃密な夜のトークに乞うご期待 !!



「こんなスゴイ方がほんとに来るの?」というお声がトンカ書店さんに届いているみたいなのですが、、、
、、、本当です。。

1997年の『メタモルフォーズ』出版記念講演会のときも神戸でコーディネイトさせていただいたのですが、200名以上の方々にお越しいただき、お話がとても面白かった、と大好評でした。
今回はとても急だったので、こういう形になりましたが、気持ちよく会場などお引き受けいただいたトンカ書店の頓花恵さんに感謝いたします。



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『ば化粧師』より抜粋
日本語の「化粧」はまさに「化ける」ということを堂々と表明していてドキドキする。
今にも妖しげな化け物たちが湧き出して 色々な変身な可能性をみせてくれるようで楽しい。

レイコ・クルック プロフィール
長崎県諫早市出身。1971年渡仏。<アトリエ メタモルフォーズ>をドミニク・コラドンと設立。当時、未開発だった特殊メーキャップのパイオニアとなる。以来、映画界、演劇界などで膨大な仕事を手掛ける。ときに舞台監督も務め、自ら監督として、映像製作にも携わり、さらに、彫刻家としての顔も持つ。
      
作品例
ヴェルナー・ヘルツォーク監督「ノスフェラトゥ」C・ルルーシュ監督「愛と哀しみのボレロ」 平山秀幸監督「愛を乞う人」他多数。

著書
12月1日の発売を待つ『ば化粧師』(リトルモア刊)の他、『メタモルフォーズ』(1998年/美術出版社)

2012年01月21日

get back !!

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お知らせです。



**追記 (2012/2/4)
立見まででた熱い会場でした。
御礼申し上げます。
神戸の後、大阪、長野も大盛況だったとか。



『Get back, SUB! あるリトル・マガジンの魂』発刊記念トーク・イベント

1月22日(日) 15:00~17:00(開場14:30)
神戸 海文堂書店 2F・ギャラリースペース
入場無料

70年代初頭、日本のウエストコースト・神戸から現れ、時代の最良の精神たちを集めて風のように来て風のように行ってしまった『SUB』という最高にクールな雑誌があった。浅井慎平、湯村輝彦、横尾忠則、草森紳一……。豪華な執筆陣と画期的なエディトリアルデザイン、「ビートルズ・フォア・エバー」「ウエストコースト'73 」等の名特集。

そしてここに、ハード・デイズ・ナイトを生きる総てのマガジン・フリークに贈るラディカル・エレガンスなノンフィクション=『Get back, SUB! あるリトル・マガジンの魂』が誕生した。

今回のイベントでは、この著者渾身の一冊を基に、神戸に拠点を置いた伝説の雑誌『SUB』と編集者・小島素治の仕事と生涯を数多くの証言から追い、サブ・カルチュアの現在を問いつつ、小島が生きた同時代の証言者と共にあの時代を語り合います。

第一部 15:00~16:00
  雑誌『SUB』を生んだ小島素治とその系譜、仕事を辿る。
  お話:北沢夏音(ライター、編集者)
     <小休憩>
第二部 16:10~17:00   小島素治・草森紳一、そして神戸のエピソード。
  北沢夏音 + 中平邦彦(元神戸新聞論説委員)+ 渡邊仁(元サブ編集室)
  +武田好史(edition螺旋社新社代表)


コーディネートなさったのは、ワタナベ・エディトリアルの渡邊仁さん。
当時、真っ只中にいた私も協力できたことに感謝いたしております。

10年以上も伝説の雑誌『SUB』を追いかけた、という北沢夏音さん渾身の、初めてのご著書だといいます。


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2012年07月20日

Long Goodbye

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脚のご帰還。
想像するだけで背筋がゾッとしそうなシーンだけど、どこかユーモラスで好きな写真です。
それに、靴フェチにはたまらないこの感覚。
エルムート・ニュートン、1987の作品です。

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靴フェチ気味であった私は「お気に入り」だった靴をなかなか捨てられず、ずいぶん前の底が劣化したこの靴も捨てようか、と悩んだ末に「そうだ !! ゴムの溶け出した部分にベビーパウダーを塗ればどうかしら」と妙なことを思いつきました。
そして、10数年振りにこの靴を履いて出かけよう、として機嫌よく歩くこと数歩・・
なんか、崩れ行くような・・

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・・と、このようなことになっていました。
でも愛着のある靴。
捨てる前に記念撮影。

ベビーパウダーはこの場合、役に立ちませんでしたが、私は靴入れに常備しています。
このところ、ご愛用のEASYTONEにも出掛けに一振り。
さらさらと気持ちいい履き心地に。

スニーカーばかりでなく、もちろん、ヒールなどにもベビーパウダーはお役立ちです。
昔、ある高級靴店の取材で、教えてもらったのですが、店内の靴には内側にベビーパウダーを、そっとわからない程度にはたいてあるのだそうです。
むむむ、なるほど、と感心したのでした。
でも、今、そんなことしている靴屋さんはないかもしれませんが。

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で、“LEGS COMING HOME, Montecarlo,1987” はこの本にありました。
1989年にマドリッドで開催されたHelmut Newton新作展のカタログです。
ここで見つけました。

最近はエルムートではなく、ヘルムート・ニュートンという方が一般的かもしれません。
大好きな写真家だったので、事故死のニュースにとてもショックを受けました。
それももう、8年も前のことなのですね。
奥さまのAlice Springsも好きな写真家です。

ところで、今日は金曜日ですね。
こころは官邸前に。

2013年08月20日

ば化粧師、来たる !

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またまた直前のお知らせながら、レイコ・クルックさんの神戸の講演会をコーディネートさせていただきました。
ぜひぜひ、いらしてください。




**追記(2013/8/28)
満員御礼。
拍手のなりやまぬ、すばらしい講演会となりました。
あつく御礼申し上げます。
東京は大倉正之助さんの大鼓にはじまり、白石加代子さんの朗読などもあって、ゲストも映画、演劇、ファッション、アート関係の方々など華やかな会場になるそうです。





『ナガサキ=======パリ
翔るレイコ・クルック変身譚』

日 時: 8月24日(土) 16:00~18:00 (開場 15:45)
参加費: 1000円 (珈琲付)
場 所: フォアベルクホール (フォアベルク日(株)神戸ショールーム地下)

Tel:078-221-8800 Fax:078-221-8855
Mail:kobeshowroom@vorwerk.co.jp
問合せ&申込み:直接フォアベルクホールまで(定員に達し次第締め切ります)


第1部(16:00~) ば化粧師、語る!!
第2部(17:00~) 「赤とんぼ」出版記念講演


映画『ノスフェラトゥ』『愛と哀しみのボレロ』など、特殊メーキャップの草分けとして知ら れる「ば化粧師」レイコ・クルック。フランスを拠点に、映画のみならず、演劇、オペラ、 コマーシャルの世界で活躍。世界の巨匠やアーティストらと膨大な仕事を手がけてい ます。自身の創作活動も多彩で、今回ノンフィクションノベル『赤トンボ』を上梓。出身 地、長崎県の諫早で体験した終戦前後の 1 年間を、10 歳の少女の目を通した物語 にしました。『赤トンボ』の出版を機に帰国したレイコ・クルックさんに話を聞きます。

2013年09月09日

イスタンブール

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2020オリンピックは東京。ですね。
イスタンブール。残念。

今年、新年を迎えたイスタンブールはとてもいい街でした。
偶然に行った街です。
年末から新年の予定が直前になっても決まらず、タイに行くつもりが叶わず、
イスタンブールになってしまって。

そんな訳で何の予備知識も期待もなく行ったのですが、、
すばらしい街でした。

写真はちいさなホテル『セブン・ヒルズ』の屋上からの眺め。
アヤソフィアが望めます。残念ながら、ここに泊まったわけではなく、
旅の達人、といっても若い女性ですが、のお宿に偶然お邪魔したときに撮ったもの。
ここで朝食・・なのだそう。うらやましい限り。

オリンピックのニュースをきいて、イスタンブールの写真を見てみたくなりました。
いえ、べつに、東京に決まっていやな訳ではまったくありません。
少し前にはデモがあったりして、気に入った街の動向には目がいってしまいます。

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アヤソフィアの内部と、、

ayasofya.JPG

↑外観。

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これはブルーモスク、トプカプ宮殿
とてもきれいですね。

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眺望随一、丘の上にあるピエール・ロチのカフェ。
ロチが『アジアデ』を執筆したといわれている愛書狂おすすめの場所。
この丘の中腹あたりにはロチがアジアデと逢い引きを重ねた墓地がありました。

愛書狂はこのカフェで『アジアデ』を傍らに、トルコティーを飲みたかったのだそうです。
で、街中の書店でわざわざ『アジアデ』を買い求めてからこのカフェのある丘にのぼったのですが・・

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なんと、『アジアデ』はピエール・ロチショップにもありました。
それも、街の書店の半額で !
愛書狂の落胆はいかばかりか !

愛書家のみなさま、お買い求めはこちらでどうぞ。

コンスタンチノープルという響きもすてきな、
また、戻りたくなる場所でした。